Impact of Behavioural Problems on Spousal Caregivers: A Comparison between Alzheimer’s Disease and Frontotemporal Dementia

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2009.7.15 第 21 回抄読会資料 担当:山川 1/9

Impact of Behavioural Problems on Spousal Caregivers: A comparison between Alzheimer's Disease and Fromtotemporal Dementia. de Vugt ME, Riedijk SR, Aalten P, Tibben A., van Swieten JC, Verhey FRJ

Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 22, 35-41, 2006 評価:B- 総評:今までは、認知症の患者の介護者の負担として、認知症を診断別に分けずに考えてい た研究が多かったが、この研究はそれを診断別、症状別に分けて捉え、より具体的な介護者 への介入を提案したということで、画期的であったと考えられる。また、そのような目的に対し、 少ないながらも数を集め、この分野では記述的な研究が多いなか、量的に分析したことは評価 できる。 しかしながら、分析方法に問題があった。記述的に FTD 群と AD 群を比較していたのに、なぜロ ジスティック回帰分析を行ったのかが疑問である。理由として、従属変数を何にしたのかがわ からず、おそらく、従属変数に FTD と AD を一緒に入れ、1 回しか分析していないことが推測さ れる。その場合、年齢と MMSE による認知機能を調整していた。これも疑問であった。年齢は、 考察でも述べているように、FTD と AD では全く違い、その背景(子供の年齢など)も違うことを 示唆しており、全く別物と考えられるが、その別のものを調整しているということは問題である。 また、MMSE についても同様なことがいえ、FTD 患者が MMSE が低く出る理由を明確にしてい たのに、AD との比較で MMSE を調整して多変量解析したことも、分析としては不適当であっ た。 この場合は、無理に多変量にしなくてもよく、多変量解析の濫用とも言える。 また、考察が細かい推測にしているため、質的にアプローチしてもよかったと考えた。 補足であるが、今回 FTD:27 人、AD:47 人であり、ロジスティック回帰分析で OR を算出してい るが、従属変数のアウトカムが全体の N の 1 割を超えると OR は過大評価をするので、気をつ けることも指摘された。 牧本先生による追加説明: ロジスティック重回帰は、病気になった人は、病気にならなかった人に比べ、リスクは何倍かを 計算します。また、死亡した人は死亡しなかった人に比べリスク要因は何かなどを計算します。 この場合、FTDの家族介護者からのNPIデータとADの家族介護者からのデータがあり、ロジ ステック重回帰を用いて、ADの人に比べFTDは特定の負担感が高いと分析しているようで す。あまり従属変数についての説明がないので推測です。通常、1回以上、回帰分析をするこ とがないので、回数は問題ではありません。 多変量解析を行うとしたら、一番適切と思われる分析方法は、判別分析だと思います。2群を 分類するにはどのような変数が適切かを検討します。しかし、判別分析は多変量正規分布の 前提があり、使いづらい分析方法です。 というわけで、やはり多変量解析を無理して用いる必要はなかったと思います。

Abstract Background 行動的な変化は、前頭側頭型認知症(FTD)とアルツハイマー病(AD)を区別するのに、主要な因 子である。しかしながら、介護者におけるそれらの変化のインパクトについてはほとんど知られて いない。本研究の目的は AD と FTD の行動的兆候に関連した介護者の苦痛を比較することであっ た。 Methods AD と専門医に診断された患者の 47 人の介護配偶者と FTD と診断された患者の 27 人の介護配 偶者は 本研究に参加 した 。患者の 行動的障害 と介護者 の感情的反応 を Neuropsychiatric

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Inventory(NPI)を用いて測定した。 Results FTD 患者は、AD 患者にくらべ、興奮、無関心、脱抑制、異常行動について、AD より有意にレベル が高かった。FTD 患者の介護者では、脱抑制、うつ、無関心に対して、高い苦痛が見られた。一方、 AD 患者の介護者は、重い苦痛を感じるものとして、患者の無関心、うつ、不安が報告された。 FTD 軍での脱抑制に対して、苦痛の平均スコアは他の項目にくらべ高かった。さらに、FTD 患者 の介護者は AD 患者の介護者よりも、一般的な負担が高く、満足していないと感じていることが報 告された。 Conclusions FTD 患者の介護者は AD 患者の介護者よりも、自分のパートナーの行動によって、全体としてより 苦痛があった。本研究の結果より、行動の問題に対する介護者の反応に焦点を当てたとき、診断 されたグループと特別な行動領域間を識別することの重要性が強調された。 Introduction  行動心理学的兆候は、認知症をもつ患者の間では一般的である。これらの兆候は主介護者 にとって重要な結果をもたらす→それらの兆候は介護者の苦痛と健康への悪影響に関連し ているからである。  さらに、これらの兆候はナーシングホームに重要な決定要素である。  介護者における、これらの兆候のインパクトをよりよく理解すると、より明確な介護者への介 入を開発しやすくなるだろう。  研究は認知症に関連した行動的障害(うつ、無関心、興奮、攻撃性、脱抑制を含む)の広い 範囲で実施されている。  さらに、介護者の苦痛と行動的な問題の一般的な程度との関連性はよく知られており、ある 特定の行動的兆候が介護者の負担につながっている。 例:自閉的で内気な行動は、破壊的な行動と同様に介護者にとってストレスフルである  しかしながら、これらの研究の大部分は、認知症患者や、あるいは、AD 患者の主介護者が 含まれているというような不均一なサンプルで見ていた。  多くの研究は異なるタイプの認知症で行動を比較しているが、特定の診断グループ間での患 者の行動問題に対する介護者の感情的反応の違いについてはほとんど知られていない。  FTD は AD と比較して相対的に早く発症し、早期からの病識の欠如が特徴的である。  行動的な変化は AD と FTD を区別する主要な因子である。  多くの研究は FTD での行動変化を調査した →これらの研究は FTD 患者が AD 患者よりも全体的に行動的問題があることを明らかにした。 →FTD において(AD)より明らかであると報告された症状は、無関心、脱抑制、多幸、異常行 動である。  この2つの障害(FTD と AD)間の行動におけるこれらの違いという観点で、特定の行動的な 問題に関連した介護者の苦痛は、FTD と AD では異なるということと、全体の苦痛は FTD 患 者の介護者の方が高いであろうと考えた。 →AD 患者と FTD 患者の行動的兆候のプロフィールと、AD と FTD 患者の行動的兆候に関し て、介護者の感情的苦痛を比較した。 Methods Subjects  AD(DSM-Ⅳの診断基準より)と専門医の診断を受けた 47 人の介護配偶者と FTD(Lund と Manchester のグループによる診断基準)と診断された 27 人の介護配偶者が研究に参加し た。  AD 患者とその介護者は、オランダの Maastricht 大学病院の Maastricht メモリークリニックか、

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Maastricht コミュニティメンタルヘルスセンターの高齢者のためのメンタルヘルスケアセンター からリクルートされた。 →彼らは MAASBED(※1)の研究に参加した。 →MAASBED は、認知症の行動心理学的徴候(BPSD)の経過と危険因子に焦点を当てた 2 年間の追跡調査である。 FTD 患者とその介護者は、オランダの、ロッテルダムのエラスムスメディカルセンターの神経 学領域で調査された。 →かれらは、FTD の介護負担の追跡調査(※2)に参加した。 ベースラインのデータは、本研究で使用された。 患者と介護者のアセスメントは、臨床的に経験のある訓練された心理学者により個別に実施 された。 データアセスメントは、その二つのセッティング(AD と FTD)の間でのアセスメントの違いを最 小限にするために定期的なミーティングで議論された。 全ての患者はベースラインでは自宅に住んでいた、インフォームドコンセントは全ての対象者 から得た。

Measures Patients Measures  患者の行動的問題は NPI の 10 項目版で測定された。 →NPI は、介護者にする構成されたインタビューで、認知症でよく観察される 10 の神経心理 学的兆候を評価している。 10 項目:妄想、幻覚、興奮/攻撃性、悲観/うつ、不安、無関心、易刺激性、多幸、脱抑制、 異常行動 各項目でのスコアは重症度(1-3)と頻度(1-4)の掛け算で得られる。 NPI の妥当性と信頼性は、すでに確立され、オランダ語版もそうである。  MMSE は患者の認知機能を測定するために使用された。  日常行動をするための援助における患者の依存度合いについては、IDDD(※3)で測定し た。 →この質問紙は日常行動を自発的に行う能力と実際の行為を実施する能力を反映した 20 項目から成っている。 →行動の実際の行為を実施する能力に関する項目(合計 0-44)と行動を自発的に行う能力 に関する項目(合計 0-36)の合計点が使用された。 Caregiver Measures  NPI の 10 の神経精神的兆候のそれぞれに対して、介護者が、彼らが経験した苦痛のレベル を 0(ない)から 5(最も強い)までのスケールで評価した。  NPI の苦痛の総得点はこれらの 10 の評価指標の合計である。  さらに、ビジュアルアナログスケールが、介護者の全体的な苦痛をアセスメントするのに使用 された。これは 1(そうでもない)から 10(最も強い)まで順位を付けるものである。  介護者の能力は SSCQ(※4)で測定された。 →この質問紙は 5 ポイントのスケール(1: 最もあてはまる、5:最もあてはまらない)で評価され た 7 項目からなっている。 →これらの項目は認知症のある人に対してケアする能力の介護者の感情(有能感)の 3 つの 領域を反映している。 1) ケアの受取人としての認知症のある人に対する満足感 2) 介護者としての自分自身の振る舞いに対する満足感 3) 介護者の個人の生活にとってのケアの結果、介護者の生活におこったこと

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Data Analyses  AD と FTD 群の人口統計学的データは、t 検定とカイ 2 乗検定を使用して比較した。  NPI の兆候スコアの平均と NPI の苦痛のスコアは FTD と AD 群で t 検定や Mann-Whitney の U 検定を使用して比較した。  NPI の項目のスコアは、正規分布していないため、有意である場合、ロジスティック回帰分析 が認知症の重症度と患者や介護者の年齢に対して調整して使用された。 →この分析のため、NPI の兆候と苦痛のスコアは、2 群(0 と 1 以上)に分けられた。  患者の機能障害(IDDD 実行スコア)は認知症の重症度の測定として使用された。 Results Group Characteristic  介護者と患者の両方(AD と FTD)のグループの特徴を表 1 に示した。 →2 群間で、教育と性別では違いはなかった。 →FTD 群の介護者と患者は AD 群の介護者と患者群に比べ有意に若かった。 →さらに、FTD 患者のほうが、病歴が長く、認知機能や行動を自発的に行う能力は AD 患者 より悪かった。 →行動における、実際の行為の実施については 2 グループ間で差は見られなかった。 Patient Behavioural Problems  表2は 2 つの診断グループでの行動的兆候の頻度を示している。 →頻度とは、具体的な行動的な兆候を現している下位項目における患者の数と割り合いの ことを指す。  行動的な兆候はすべての FTD 患者で現れ、AD 患者の 91%患者に現れた。  無関心は、両方のグループ間で、最も共通した行動的兆候であった、しかし、FTD 群では 89%に、AD 群は 57%しばしば見られた。  AD 群では、不安、うつが次に共通で見られ、50%以上の患者で見られた。  FTD 群では、(無関心の)次によく見られたのは異常行動(82%)で、脱抑制(67%)、易刺激 性(52%)と続いた。  NPI の下位項目の平均の比較は FTD 患者が、AD 患者よりも総スコアで高く、興奮、多幸、無 関心、脱抑制、異常行動において、たかかった(表2)。  追加したロジスティック回帰分析では、疾患の重症度(IDDD の行為の実施能力)と患者の年 齢を調整したあとでは、以下のグループ間で有意差が見られた。 脱抑制(OR:26.1 95%CI:4.6-147.4)、無関心(OR:35.3 95%CI:3.6-346.5)、興奮(OR:4.4 95%CI:1.1-17.7)、異常行動(OR:6.9 95%CI:1.6-29.8) 多幸は有意差は見られなかった。  しかし、さらに実施した分析では、認知機能(MMSE)を調整した後では、脱抑制と異常行動の みで有意差が見られた。 Caregiver Distress in AD and FTD  各 NPI の兆候と関連では、介護者の苦痛は二つの診断グループ間で調査された。  AD 群で最も苦痛である兆候は、不安、無関心、うつであった。(表3参照)FTD 群では、無関 心が最も苦痛であり、その次に脱抑制が続いた。  2 群間での具体的な兆候に関する苦痛の比較では、脱抑制と多幸が AD 患者の介護者に対 してよりも FTD 患者の介護者に有意に苦痛を与えていた。  追加したロジスティック回帰分析が、NPI の苦痛の下記項目のスコアで、これらの違い(→脱 抑制と多幸が AD 患者の介護者に対してよりも FTD 患者の介護者に有意に苦痛を与えてい たこと)が疾患の重症度や介護者の年齢に関連しているかどうかテストするために実施され た。

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→機能障害(IDDD の実際の行為を実施する能力)と年齢を調整した後、有意差が残ったの は、脱抑制のみ、で多幸では、有意差はなかった。 →さらに認知機能を調整後も脱抑制では有意差が見られた。 さらに、全体的な介護者の苦痛と介護者の有能感を AD と FTD 患者の介護者間で比較した。 →比較の際には、疾患の重症度と介護者の年齢を調整したのちに、回帰分析を使用した。 FTD 患者の介護者は、AD の患者の介護者より苦痛のあるケアの経験があり、VAS で測定し た場合も同じであった。 介護者の有能感の総スコアでは有意差はなかった。 しかし、SSCQ の 3 つの下位項目を調査すると、FTD 患者の介護者は、ケアの受取人として の患者に対する満足感が少なく、介護者としての満足感も少なかった。 しかしながら、AD 患者の介護者は、介護者の個人の生活にとって、ケアの結果、介護者の 生活におこったことをより経験していた。

Frequency Distributions  NPI の苦痛の評価を3つのカテゴリー(低い:スコア 0-1、中等度:2-3、高い:4-5)に分けた。  表 4 は特定の兆候が患者において現れているときの介護者における苦痛の評価の分布を示 している。 →AD 患者で最も起こる頻度の高い兆候は無関心、不安、うつであった。 →AD 患者で無関心があるとき、高い苦痛(44.4%)がよく見られた。 →不安やうつの場合では、中等度から高い苦痛がよく見られた。 →興奮は AD 群では少なかったが、それがあるとき、高い苦痛がよく見られた(71.4%)。 →FTD 群では最も起こる頻度の高いものは、無関心、異常行動、脱抑制であった。 →FTD 患者で無関心があるとき、中等度の苦痛がよく見られた(54.2%)。 →脱抑制の場合は高い苦痛がよく見られた(50%)。 →異常行動では、わずかな苦痛がよく見られた(59.1%) →うつは FTD 群ではあまり頻度は高くないが、うつがある場合の介護者の苦痛は 100%高い 苦痛であった。 Discussion  本研究は、行動的な兆候のプロフィールは FTD と AD で異なることを示した。そして、違いは これらのグループでのこれらの兆候に関連した介護者の苦痛のレベルにおいても存在した。  FTD 患者は、AD 患者に比べ、機能障害のレベルを考慮にいれても、興奮、無関心、脱抑制、 異常行動のレベルが有意に高かった。  その観察された違いは、Levy らの結果(行動的な兆候をアセスメントするために NPI を用いて いる)とおおよそ一致している。 →しかしながら、Levy らは、FTD 患者は、AD に比べ多幸が現れていて、彼らは興奮について は、AD と FTD では差はないとした。 →この2つの研究(Levy らの研究と本研究)の結果の違いは、グループと異なった認知症の 重症度の操作の違いの中で、認知症の重症度においての違いによるものだろう。 →本研究では、機能的障害を考慮にいれなくても、FTD 患者において多幸が AD よりも有意 に高いレベルを示した。  私たちの知見では、本研究は、FTD と AD 患者の介護者によって経験された患者の行動的な 問題に関連した苦痛を比較した初めてのうちのひとつである。  先行研究のひとつに、Mourik らの研究がある。これは、FTD 患者の問題行動に関連した介護 者の苦痛を調査したものである。  本研究では、全体的な FTD グループにおいて、無関心と脱抑制は最も苦痛の高い兆候であ った。  さらに、うつの患者はあまり多くなかったが(25%)、患者のうつを経験した介護者は高い苦痛

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でよく見られた。 FTD 患者の 81%に見られた異常行動は、苦痛がないか、わずかな苦痛しか経験していなか った。 これらの結果は先行研究の結果、いくつかの問題行動は他人よりも介護者により多くのイン パクトを与えるというものを支持する。 →またこの結果は、介護者の苦痛を改善するために研究したり試したりするときに、具体的 な行動的な変化に焦点を当てることの重要性を強調している。 FTD 患者の介護者と AD 患者の介護者の比較により、FTD 患者の介護者が、AD 患者の介 護者に比べ、苦痛の平均が高いことが明らかになった。 →特に、脱抑制と無関心は AD 群に比べ、FTD 群の方が苦痛の平均が高かった。 →しかし、AD 群でも介護者は、無関心があったとき、高い苦痛として、無関心を最も頻度が 高いと報告した。一方で、FTD 群では介護者は、無関心があったときは、中等度の苦痛と して無関心を最も頻度が高いと報告した。 →したがって、FTD 介護者でのより高い苦痛の平均のレベルは、おそらくは、FTD 患者にお いて、行動的な問題の頻度も重症度のより高いことが原因だと考えられる。 また、認知症の重症度と年齢を調整した後でさえも、FTD 患者の介護者は、AD 患者の介護 者よりも、全体的な介護者の苦痛のレベルが高いことが報告された。 さらに、FTD 患者の介護者は、患者に満足していることが少ないと感じ、介護者としての満足 も少ないと感じている。 →可能性のある説明としては、FTD でのより激しい(強烈な)行動的な問題は、提供したいと 考えているケアを結果として提供することの難しさを抱えている介護者に負担であるという ことである。 →さらにいえば、FTD の介護者は、ケアの受取人としての FTD 患者に対してあまり満足して いない。なぜなら、患者においての行動的な破壊(解体)が多いと、意識したケアをゆがめ るからである。 さらに、介護者のストレスでの違いは、AD 患者は、FTD 患者の社会的に困惑するような行動 やごまかしのような種類の行動的な問題をめったに持たないという事実によって説明できる。 AD の介護者は彼ら自身の生活に対するケアのかかわりの結果、自分の生活におこったこと (悪影響:プライバシーがない、重い責任)をより多く体験していた。 →この結果に対する解釈は、AD 患者は認知機能障害(例:記憶障害と見当識障害)のため FTD 患者よりも継続的な見守りが必要である。このことは、介護者の邪魔になり、結果的 に、FTD の介護者にくらべ、AD の介護者自身にとっての時間は減る。 本研究では、患者の行動以外で、介護者の苦痛の他の決定要素について調べていなかった。 しかがって、FTD の介護者の苦痛の全体的なレベルが(AD より)高かったことを説明する可 能性のある理由について推測するしか出来ない。 →若年発症の認知症は早期に正確に診断することはあまりない、それが結果として、患者や 介護者に対する欲求不満や、適切なケアを遅らせることにつながる。 →さらに、若年発症の認知症では、大部分の人が活動や個別性のあるライフスタイルを楽し んでいるときに現れるため、更なる問題が出てくる。 →もっといえば、まだこどもが小さいと、若年発症の認知症患者の介護者は責任や心配を追 加で負うことになる。 行動的な変化は AD よりも FTD の方が目立った特徴があり、介護者のストレスに対してのよく 知られた危険因子である。 脱抑制に関する問題はおそらく、介護者にとって社会的に困惑することであり、好ましい社会 とのかかわり合いを妨げる。そのことが介護者により大きな苦痛の原因となる。 無関心は FTD でよく起こる、そして、また、多くの FTD の介護者にとってストレスフルである、 これは他の認知症患者の研究でもそうである。 →無関心は、患者と介護者間のかかわり合いも消してしまい、結果として彼らの関係性を損 なう。

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 最後に、苦痛のレベルにおける違いは、2 群間のサポートの利用できる可能性における違い により影響されると考えられる。 →サポートサービスはほとんどが高齢者に対して設定されている、したがって、高齢の AD や 介護者は若い FTD 群よりもこれらのサービスによりよくつながることが出来る。 →さらに、家族サポートにおいても違いがあると考えられる、なぜなら、FTD 患者はおそらく AD 患者よりも若い子供がいるからである。  この研究にはいくつかの潜在的な限界がある。 →第 1 に、AD と FTD 患者の問題行動を比較するために、基準の行動的な変化において、 FTD 患者を選定するときに、研究の循環性の危険性が存在する。 →これを最小限にするために、神経学的、神経心理学的、神経画像データに基づいて患 者を診断した、また、よく定義された診断基準に基づいて患者を選定した。 →第 2 に、AD と FTD 患者のマッチングの問題は検討されるべきである。 →FTD 患者と AD 患者の行動の特定の側面を比較するのに、2 つのグループの全体的な 比較可能なものをひとつ保障しなければならない。 →しかしながら、AD と FTD の疾患の経過や兆候学的における違いは、認知症の重症度の 昔からある測定が妥当でないことを示している。 →本研究では、認知症の重症度を測定するものとして MMSE を使用したことは、FTD 患者 のテストのスコアにおける、モチベーションや協力、忍耐力や言語の問題のために、問 題であった。 →また、罹病歴は、AD と FTD では疾患の経過において違いがあるので、適当ではないと 考えられる。 →したがって、分析では、機能障害を調整することによって、代わりの方略として使用し た。 →追加の分析として、認知機能(MMSE)を調整することによって結果をチェックした。 →このようにして、本研究でのグループの違いが認知症の重症度における違いのためと いう可能性がないようにした。 →第 3 に、グループの比較は、介護者の苦痛でのグループの違いの潜在的な交絡因子とし て認知症の重症度に加え、介護者の年齢について調整された。 →しかしながら、介護者の患者の行動への反応の仕方はおそらく、いくつかの因子によっ て決定される、たとえば、介護者のコーピングスタイル、ソーシャルサポートや親族の質 などである。 →介護者の苦痛についての更なる研究はこれらの因子のインパクトについて探索するべ きである。 →最後に、サンプルサイズは相対的に小さく、非常に広い信頼区間によっても示されるように、 動力不足の研究である。  本研究の結果は、問題行動に対する介護者の反応を調査するときに、診断によるグループ と行動の具体的な領域を区別することの重要性を強調する。  いくつかの行動は、FTD 患者での脱抑制や無関心のように、特定の診断グループでは、より 頻繁に起り、結果として、介護者の苦痛となる。  一方で、他の行動は、全体のグループでは頻度が減る。しかし FTD 患者におけるうつのよう に、その兆候が現れたときの介護者の高いレベルの苦痛をもたらす。  しかしながら、多くの介護者のトレーニングプログラムは主に、患者の行動的な行き過ぎ(暴 力とか興奮)についてターゲットにしており、無関心やうつには焦点をあてていない。  本研究の結果により、特定の(具体的)介入プログラムが、開発され、介護者の苦痛を減らす ために、FTD あるいは AD 患者での無関心やうつと同様に脱抑制に関連した問題にも的を絞 るべきである。

参考資料

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用語 impact:インパクト distress:苦痛 symptoms:兆候 spouse caregiver:介護配偶者 refer:患者を専門医にまわす disturbance:障害 agitation:興奮 apathy:無関心 disinhibition:脱抑制 aberrant motor behaviour:異常行動 competent:有能でない、満足のいく、相当な behavioural and psychological symptom:行動心理学的兆候 specific:明確な、具体的な、特別な course:経過 daily activity:日常行動 feeling of competence:有能感 supervision:見守り interaction:かかわり合い、相互作用 consequence:~した結果~が起こってこうなった ※1 The aim of this study was to detect behavioral subsyndromes of the 12-item Neuropsychiatric Inventory (NPI). Cross-sectional data of 199 patients with dementia living in the community were collected. Principal component analysis (with Varimax rotation) was used for factor analysis. Results showed the presence of three behavioral subsyndromes: mood/apathy, psychosis, and hyperactivity. Anxiety was regarded as a separate symptom. The subsyndrome mood/apathy was the most common, occurring in almost 80% of the patients, versus psychosis and hyperactivity, which occurred in 37 and 60% of the patients, respectively.

※2 Objective: To discern behavioral problems that co-occur in frontotemporal dementia (FTD) patients, and to investigate the relation between behavioral clusters and the burden for caregivers. Patients and Methods: Baseline data of 63 FTD patients and their respective caregivers were used to detect the behavioral clusters in the Neuropsychiatric Inventory (NPI) and the accompanying distress evoked in caregivers. To detect the clusters in behavior of the FTD patients, we performed multidimensional scaling (procedure: PROXSCAL). Multiple regression analysis was used to determine the association between behavior of patients and the distress experienced by caregivers. Results: This was the first study that found behavioral clusters for FTD. Two behavioral clusters were found: agitation/psychosis (comprising delusions, hallucinations, irritability and agitation) and mood (made up of anxiety and depression). The remaining NPI domains (euphoria, disinhibition, aberrant motor behavior and apathy were found to be autonomous. After controlling for relevant confounding factors, caregiver distress was strongest related to agitation/psychosis, followed by mood. Disinhibition and aberrant motor behavior were mildly related to caregiver distress. Euphoria and apathy were not significantly related to distress. Caregivers of patients living at home were more distressed by the behavioral problems of the FTD patients than caregivers of hospitalized patients. Discussion: The high prevalence of psychopathology in FTD patients and the associated caregiver distress was confirmed in this study. Clustering behavioral symptoms allows investigation of the relationship between structural or functional cerebral deficits and neuropsychiatric symptoms.

※3 The Interview for Deterioration in Daily Living Activities in Dementia: Agreement Between

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Primary and Secondary Caregivers Teunisse S, Derix MMA International Psychogeriatrics, Vol. 9, Suppl. 1, 1997, pp. 155-162 Inability to perform activities of daily life is inherent to dementia and an essential component of its severity. Examination of this disability is crucial for diagnosis, management of the patient and family, and evaluation of treatment effects. To examine everyday disability in community-dwelling patients with mild dementia, we developed the Interview for Deterioration in Daily living Activities in Dementia (1DDD)at thememoryclinic of the Academic Medicalcenter at Amsterdam. The IDDD is a caregiver-based measure, which consists of 20 concretely worded items, reflecting the initiative to perform and actual performance of self-care and more complex activities. The original version of the IDDD (1988) was an interview measure, but since 1990 a paper-and-pencil version has been used, which has good construct validity and test-retest reliability, as well as good responsiveness to deterioration over 6 months. In the present study, we examined interobserver agreement among 25 caregiver pairs, which consisted of primary and secondary caregivers. Although the reliability of caregiver reports is often questioned, we found substantial to almost perfect agreement at subscale level and acceptableagreement for most of the items. We conclude that the paper-and-pencil version of the IDDD is a suitable instrument for the description and discrimination of disability among patients with mild dementia still living at home. The IDDD may also be a useful method to incorporate in clinical trials and longitudinal studies.

※4 有能感(sense of competence, feeling of competence)とは,「コンピタンスが有効かつ適正に 機能しているという実感」あるいは,「有機体の能力が,環境との相互作用の中で有効に作用 しているという実感」として捉えることができる(勝俣,1992). competence は「能力、資質」を 表すが、competence が高いからといって、有能感が高いとは限らない。

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